白井お好み焼き店の謎が解けた日

 お好み焼きの店で「白井」というお店がある。

 何年か前に、買い出しに来ていた白井のおばちゃんと、ジャスコの店の前で、話す機会があった。
 その白井のおばちゃんが言うには、

「うちのお好み焼きは、変わっとるんよ。」
「へぇー。どうちがうんですか?」
「最初はね、間違えて作ったんじゃけど、それがええ、って、言われてねぇ。」
「間違えて作ったんですか?」
「そうそう。だから、ほかとは、作り方が違うんよ。」

 その時は、店の名前も知らず、そういうお好み屋さんがあるんだ、という興味を抱いたまま、そのまま、数年を過ごした。しかも、未訪のままの状態が続いていた。
 意外と、新規のお好み屋さんって、入り難かったりする。

 さて、うちのパートさんに「薄塩のお京」さんがいる。
 お京さんに、その話をしてみたところ、

「うちの弟が、多分、そのお店に行ってたと思いますよー」

 とのことで、期待して、翌日の報告を待った。

「で、どうでした。白井でしたか?」
「はい。白井でした。三工生がよく通っていたお好み焼き屋さんだったそうです。」

 との答え。「三工」とは、今では伝説の「三原工業高校」のこと。
 伝説を知りたければ、御自分の責任でお願いします。私は、存じておりませんので。

 しかし、お京さん、そこまでの話(お店の話で、作り方以外の話)で盛り上がってしまって、かんじんな「お好み焼きの作り方」は、きいてこなかったらしい。
 仕方がないので、翌日に「作り方」は、持ち越す事となった。

 翌日、お京さんから、

「白井のお好み焼きの作り方、聞いてきました!」
「で、それは?」

 期待に胸を膨らませ、私は耳をダンボにしていた。

「えっとですね。まず、焼そばを作って、クレープ状に生地をひいて、その上に焼いた焼そばをおいて、生地をかけて、ひっくりかえすんだそうです。」

 とのこと。
 え?キャベツは?豚は?と、製法上の疑問がつのる。
 通常、お好み焼きの焼そばは、そのままのせるか、すこし焼いてのせるか。それを乗せてしまったのならば、あとの具は、どうなるの?
 それとも、そういった、シンプルさが売り?

 そういった疑問を、聞いてみると、

「最初に『焼そばを作る』って言ったじゃないですか!」

 とのこと。
 どうやら、「本格的な焼そば」をつくるみたいだ。もちろん、そこに、本来のお好み焼きの材料であるキャベツと豚は入っている。
 それを使って、お好み焼きのスタイルに形成する、ということなのだろう。

 ある意味、究極の合理化とも、考えて良いと思う。

 驚きのお好み焼きが、「白井」で作られていたんだなぁ、と、感心至極。
 そんなお好み焼き、出会った事がない。

 なるほど。
 焼そばが具の、お好み焼きか。
 これは、一度やってみる価値ありかもしれない。

 バリエーションも、たくさんできそうで、発展的なお好み焼きなのかもしれない。
 そして、この作り方は、きっと「白井」オリジナルだろう。
 
 私は、勝手にこのお好み焼きを「白井焼き」と名付けることにした。
 しかし、一般人には、この「白井焼き」は、だまっていては作ってもらえないらしい。
 普通に「お好み焼き」とオーダーすると、普通の「お好み焼き」が出来てしまうそうだ。

 ここはあえて、「焼そばが具の、お好み焼き」と言うべきだろうか?
 少し悩む所だ。

 おそるべし「白井焼き」・・・。
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