龍昇軒のラーメン

 和田沖の三菱三原の前に、1軒のラーメン屋さんがある。その名は「龍昇軒」。もう、風景の一部となっているような、存在感。溶け込んでいる。国道185号線を通る度に、目に入っていたのだが、入る機会もなく、そのまま通り過ぎていた。
 
 子供の頃からあるような気がしていたが、本当にかれこれ30年ぐらい前から営んでいらっしゃるらしい。

 1年ほど前、勇気を振り絞り入店してみたところ、すっと入る素朴な味わいに惹かれてしまった。
 
 暖簾には「はせべ」の名前が入っている。

 店に入ると、横長の店内にカウンターとカウンターの分離延長部分みたいなテーブルで、よくある昭和のラーメン屋さんという感じ。御夫婦でやっている様子。

 カウンター席に座って、ラーメンを1つ注文して、のんびりと眺めてみた。

 店内は、時代が止まっているような感じ。作動しているのか定かではないが、ホットドリンク用のウォーマーや、古びたドリンク用の冷蔵庫。
 そして、三原のラーメン店の定番でもある、おでん!

 「来来軒」とか、「幸来軒」とか、「松竹軒」とか、そういう雰囲気。そういう味のラーメンが出てくるような予感がする。

 ラーメンが出てくる。

 昔風のラーメンで、赤身のチャーシューが2枚。メンマ。ネギ。
 麺は細めんではなくて、中太。「自由軒」より、すこし細い平麺。もちろん、暖簾から「はせべ製」とわかる。
 スープを啜ると、素直に美味しい。なにかが突出していることもなく、何かが足りない事もなく。鶏がらベースがしっかりとしている上に醤油が乗っかり、その脇を魚介の旨みでサポートしている感じである。塩加減もちょうど良い。
 このスープに中太平麺がとてもよく合う。すこし柔らかいような気がしないでもないけど、食べていくうちに気にならなくなっていく。
 チャーシューは、わしわしとした感触が心地よい。臭みもなく、旨い。
 ネギの香りがぷうんとラーメンに刺激を与えて、味を引き締めている。

 きちんとスープも全部飲み干して、ごちそうさま。

 1杯450円である。
 いまどき、この値段である。三原で2番目に安くて旨いラーメン(って、バーミヤンとかそういうのは、除く)。

 おじさんとおばさんのお二人でやってらっしゃるようなので(しかも30年も)、この味もお二人の人生なのかなぁ、なんて思ったりする。
 おじさん、赤身のチャーシューを乗せたり、背脂を乗せなかったりするのは、脂っぽいのが嫌いなのかな、とか。
 おばさん、陽気で気の良い感じが、無口な感じのおじさんと良い組み合わせだなぁ、とか。

 いいなぁ、こういうお店。好きだなぁ。

 いまどきのラーメン屋のラーメンも旨いけど、こういった情緒あるお店の魅力というのも、捨てがたい。

 ときどき、思い出したようにふらりと立ち寄りたくなる、そんなお店である。
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