大和町の米粉を使ったパン「三原瑞穂」

 ずいぶんパンのことを書いていないなあ、と思い、なんとなく書いてみたいと思います。

 巷では最近「米粉」を使ったパンなるものが、出回っています。
 私の記憶が確かならば、米粉を使ったパンが一気に全国に広まったのは、新潟の某製粉会社が開発した製粉法に由来するように思います。

 米という穀物は、小麦と同じように製粉した場合、その粉の粒が大きくなるそうです。そこを技術の力で細かくし、パンにも使えるようにしたのが、新潟の某製粉会社の新技術でした。

 そして、その米粉で、全国各地に米粉のパンが広がった…かといえば、そういうわけでもありませんでした。

 なぜなら、「米粉と小麦粉では、まったく性格が異なる」というハードルが、全国各地のパン屋の頭を悩ませたから・・・という事情があるようです。

 小麦と米では、まずパンを形成するための「グルテン」というたんぱく質ができるかどうかという点で異なります。「グルテン」を形成するたんぱく質は、全穀物の中で、小麦しか含まれていないものです。米にはちっとも含まれていません。
 となると、単純に考えると米ではふっくらしたパンなんてできっこないのです。

 そこは、人の知恵がカバーします。
 なければ足せばよい。

 小麦から抽出した「グルテン」を、米粉に添加すれば、なんとなくパンらしいものができるのです。

 なんとなく、と書いたのは、人間と人造人間ぐらいの差があるからです。要は取ってつけた「グルテン」。米粉の性質とグルテンが乖離している状態では、小麦と同様に扱えるはずがありません。

 そんなわけで、小麦の扱いにたけた職人といえども、米粉プラスグルテンの粉にはてこずってしまったようです。


 さて、ずいぶん脱線いたしました。
 私もその新潟の米粉を使ったパンは、出始めのころ、さんざんテストさせていただきました。ある程度のパンはその時にできるようになっていたのですが、私のわがままで「こんな妙なパンは、なんかしっくりこない」といった感覚的な理由で、放り投げておりました。

 しかし、です。今年に入って、とあるところから「三原市大和町の米を使った粉がありまっせ」と耳打ちをされたわけです。

 地元の米を使ったパンが作れるのなら、三原のパン職人として冥利に尽きる。そう思いました。

 そんなわけで、早速その粉を入手し、パンを作り事にしました。製法については、以前の通りで問題なく・・・。できたのですが・・・。

 味に不満が残りました・・・。大和町産だからではなく、米粉のパン自体にです。

 あまりにパンとしてあっさりしすぎており、まるで炊飯直後の米の淡白さ。ご飯ではなくパンであるため、食べ口がとても気になります。
 大和町の米は、私が生まれてからずっと口にしている、なじみ深い米です。私は、この米なしには生きていけない・・・と思うほど、愛している味です。しかし、その味がパンになると、一気に不満が生まれてくるとは・・・。

 確かに、パンと米の飯とは、作り方自体に発想が違います。その差をどう埋めるか・・・。


 いろいろ考えた結果、その弱点を改善し、やっと本日、納得のいく米粉の食パンが出来上がりました。変な言い方ですが、米粉のパンとは思えないパンです。
 三原の大和町の米から作ったパンなので「三原瑞穂(みはらみずほ)」と名付けました。

 私の広島県産小麦100%使用の「備後小町」とこの「三原瑞穂」は、パン屋としてどうなんかなぁ、というパンですが、三原のパン職人としては、誇りを持って作れるパンではないかと思います。

 あとは、お客さんが「おいしい!」と言っていただけるよう、調整することが課題となりますが、この「三原瑞穂」を大切に作っていけたらなぁ、と思います。そして、もっと製法を改善して、日本で一番うまい「米粉の食パン」にしていけたら、とってもおもしろいのではないかなぁ・・・とおもうのですが、それは私の腕と相談ということで。

 ジャスコ店のみ。しかも、私の出勤している日のみという、超限定の食パンではございますが、今後ともお見知りおきのほど、よろしくお願い申し上げます。
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